
うつ病不調者が発生した場合、まずうつ病に気付き、精神科受診につなげる事が大切ですが、 うつ病の精神科未受診の率は70%以上にものぼります。本人および周囲はどのようにして気付き、受診を促したらよいのでしょうか。 今回は病前性格、症状、対応の仕方がそれぞれ異なるために、従来型うつ病と現代型うつ病の2パターンに分けてみていきたいと思います。
従来型うつ病(メランコリー型)

自覚症状としては抑うつ気分や不安・焦燥といった気分の問題を自覚する前に、不眠、食欲の低下、腹痛、頭痛、肩こり、 腰痛、腹部不快感、便秘、めまい感、動悸といった身体的な問題で自覚することも多く、まず内科に受診し、うつ病の可能性を指摘されて精神科受診に至る事も多いです。 このような自律神経症状が長期に渡って続いている時にはうつ病が隠れている可能性を疑った方がよいといえます。気分の落ち込みについても朝方が重く、 夕方にかけて次第に軽くなるといった日内変動があることが多いです。しかし日内変動はあってもほとんど一日中、毎日、2週間以上に渡って抑うつ症状が続きます。 過度に自分を責めるなどの特徴もみられます。
また周囲からは、職場での遅刻、欠勤の増加、集中力が落ち、ミスが増えるために業務パフォーマンスが落ちるといった事から気づかれます。
うつ病治療の原則通り薬物療法、休養が原則となり、現代型うつ病に比べて抗うつ薬への反応性も比較的良好ですが、 初期のうちはなかなか自分がうつ病であると受け入れ難く精神科受診を嫌がります。この場合には「うつ病の可能性があるから精神科に行った方がよい。」 というより本人の一番困っている症状に焦点をあてて「眠れないのはつらいから、睡眠薬の処方をしてもらいましょう。 精神科は睡眠薬の使い方に関しては内科よりもプロだから。」といったように受診を促した方が本人の受け入れが良くなります。 また受診して休養を勧められても勤勉な性格のため「いまここで自分が抜けたら周りに迷惑をかける」と、休養に踏み切れず、 能率が落ちているのに無理を押して仕事をし、終わらないから残業をし、さらなるうつ病の悪化を招くといった悪循環に陥っていくケースもあります。 このような場合には産業医から「今のあなたは休むことが仕事です」と半ば強制的に就業ストップをかけることが必要です。 また死にたいという気持ちが切迫しているなどの重症例では、例え本人が「家族に心配をかけるから言わないでくれ」と 嫌がっていても必要に応じて家族に連絡をとり(個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号第23条で医療者に許されています))、 病状の理解を促し、当座の本人の危険な行動を阻止するよう見守って頂き、入院にあたり協力を仰ぐこともあります。
現代型うつ病

・あまり怒られたこともなく、挫折を経験したこともない過保護に育てられたエリート男性。 社会に出て現実の厳しさに直面し、立ち向かわずにすぐに逃げ出してしまう。職場にくると抑うつ気分に襲われるため出社できなくなるが、 週末は遊べる。「自分がうつ病になったのは職場のせい」と他責的なタイプ。
・「この職場は本当に自分のやりたいことができない、今の仕事にやりがいを見いだせない」 といつまでもモラトリアムを続けようとする。不全感と倦怠感が強い、ライフスタイルの問題のように見えるタイプ。
・リストカット、摂食障害、不定愁訴を伴い、衝動性や不安・焦燥が強いタイプ。
・自己愛が強い若年女性。過食、過眠、体が鉛のように重いといった症状があり、これらの症状はくすぶってだらだらと続く。 叱責に弱く過度に落ち込むが、ほめられると元気になるという気分反応性を認めるタイプ。
これらのタイプでは、「うつ病」との診断の受け入れも比較的良いケースが多いです。 抗うつ薬への反応性も従来型うつ病ほど期待できず、入院をすると途端に良くなり日常生活に支障がでないくらいには回復しますが、 職場復帰となると遷延したり、あるいは短期間での休職と復職を繰り返すといったケースも多いため、従来型うつ病と異なり、 治療のメインとなるのは薬物療法や休養ではなく、本人の性格傾向に応じた心理療法や環境調節となります。 職場でも「飴と鞭の対応」、つまり一時的な負荷の軽減は必要な時もありますが、だらだらと休ませてしまうと復帰のチャンスを逸してしまうことがあり、 またむやみやたらと保護的に扱うのではなく言うべきことはきちんと言い、できていることは積極的にほめるなど、仕事に対しての動機付けも大切となってきます。 それでも、最低限の職務が果たせず、非常識な行動や要求ばかりが目立つ場合には、 就業継続にストップをかける必要があるでしょう
実際には
